教育の内容・教育課程・学習指導要領

「教育の内容」
 古くから社会の文化的遺産を伝達することを主眼とする教材優位の教科主義の立場がとられてきたが、近代にいたって学習者の側に重きをおく経験主義が現れ、学習者の経験活動が教育内容であると主張する立場をとった。
  • 教科主義
 教育とは、社会の文化的遺産を伝達することであるという立場をとるもので、古くは、志那周代の六芸やギリシアの七自由科、近代の読・書・算や歴史・地理・理科のいわゆる内容教科、歌唱・図画・手工等の表現教科、農・工・商等の実業科教科などがある。
  • 経験主義
 学習者の自発的な経験活動を助長するものであるとする立場で、教育内容としては、大人の社会が要求する論理的に組織した教科ではなく、児童の活動であるとする。ルソー、パーカー、デューイらがこの立場をとった。

「教育課程(カリキュラム)」
 教育の目的を達成するために教育内容を選択し、さらに整備し組織化したものである。教育課程はカリキュラムの訳語として使用されているが、このことばの語源はラテン語のcurerre(走る)にもとめることができる。

「教育課程の種類」
 教育課程の形態としては、教科(文化遺産)の中心の教科カリキュラムと、学習者を中心とする経験カリキュラムの二つに大別できる。しかし、現実の教育課程は、はっきりと両者にわけられるものではなく両者を極として、中間にいろいろな形態がみられる。
  • 教科カリキュラム
    • 教科が中心の-教授に先立ってすでに選択・組織されている教科を教えることが中心となってくる。つまり、体系的知識が中枢となっている教育課程である。
    • 「教科」と「教材」から構成される一連の系列
    • 学問中心、教材中心
    • 教材理解に重点がおかれ、つめこみ的(注入的)画一的になりがち。
  •  経験カリキュラム
    • 児童・生徒が体験する種々の実際的・具体的経験の活用によって成長させようとするもので、学習者が中心となった教育課程である。
    • 子どもの自発性に基づいた活動や学習を尊重する。子ども自身の経験から生じた興味や関心を重視したカリキュラム 
「カリキュラムの方式」
  • 広領域カリキュラム
    • 特徴は、領域の総数が少なく、一つの領域が広範囲にわたること。
    • 小学校低学年の「生活科」など
    • 教科カリキュラムと経験カリキュラムの間に位置するもので、知識と経験との関連を目的とするものであるが、教科中心カリキュラム型と、経験中心カリキュラム型とが考えられる。
    • 教科中心カリキュラム型は、与えられた教材領域の中で分離している諸教科を結合し、融合したものである。たとえば物理・化学・生物・生理学等の内容を総合して取り扱うやり方である。
    • 経験中心カリキュラム型は、児童・生徒の経験が生活領域による広領域から構成するもので、家庭生活・余暇・市民生活・消費・生産・交通などである。
  • 相関カリキュラム
    • 広域カリキュラムの教科中心カリキュラム型に似たものであるが、この場合は教科の枠を残し、教科カリキュラムの特徴を生かしながら教科の統合をはかるもので、2~3の強化だけの部分的な相関に終わる。
  • コアカリキュラム
    • 中心教育課程、核心教育課程、中心過程をもつ教育課程ともいわれ、型は経験カリキュラムの型に入れられるものと考えられる。特色としては生活課題の解決を中心にし、その解決に関連した基礎的な内容の学習を関連付けるという点が挙げられる。
    • 中核となる教材や学習内容を置き、問題解決学習によって学習をすすめる。
  •  潜在的カリキュラム
    • 子どもたちが知らず知らずのうちに影響を受け、身につけていく社会・文化的風土や慣習、規範など
    • ⇔顕在的カリキュラム

「教育課程の構成の手順」
  • 一般的な手順として次のような順序が考えられる。
  1. 教育の目的(目標を含む)の設定
  2. 教育目的の達成に必要な教育内容の選択
  3. 選択した教育内容の組織
  4. 組織した教育内容の児童・生徒への提供

「教育課程の編成」
 教育課程については学校教育法に基づいて、小・中・高・幼稚園などそれぞれに応じ、学校教育法施行規則で定められている。
  • 小学校
 小学校の教育課程は、国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭及び体育の各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする。
  • 中学校
 中学校の教育課程は、国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技術・家庭及び外国語の各教科、道徳、総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする。

「教育目標の設定と教育内容の選択」
  •  スコープ
    • カリキュラムを編成する場合に、子どもたちにどの領域を教えるか、どの範囲まで教えるかを選択する必要がある。この領域と範囲のこと。
  • シークエンス
    • 興味あることから順番に学習したり、簡単で単純なことから難しくて複雑なことを理解したりというように、教育内容を配列していくこと。
  •  単元
    • 課題に沿って行う学習活動のひとまとまり。

「学習指導要領」
  • 1947(昭和22)年
    •  文部省は学校の教育課程の基準を示すものとして、「学習指導要領・一般編」を発行した。
    • 社会科、家庭科が設けられた。
  • 1951(昭和26)年
    • 特別教育活動が新設された
  • 1958(昭和33)年
    • 法的拘束力を持つものとなった。
    • 小中学校に「道徳」の時間が特設された。
  •  1968(昭和43)~70年告示
    • 発見学習が導入される一方、能力別主義再編による教育が行われた。
    • 教育内容が過重になって、落ちこぼれや学校病理を引き起こした。
    • 授業時数が「最低」から「標準」へと改められた。
  • 1977~78年告示
    • ゆとり教育と人間性を重視した改訂
    • 学校の創意を生かした特色ある学校づくりが求められた。
  •  1988~89年告示
    • 変化する社会に対応できる自己教育力があり人間性豊かな人間の育成が目指された。
    • 小学校低学年で「生活科」が新設
    • 高校社会では、「地理歴史科」と「公民科」へと再編
    • 「関心・意欲・態度」の育成をはかる「新しい学力観」が導入された。
  •  1998~1999年告示、2003年一部改訂
    • 完全学校週五日制、授業時間は3割削減
    • 総合的な学習の時間が新設
    • 「ゆとり」のなかで特色ある教育を展開し、子どもたちに基礎的・基本的な内容を確実に身につけさせることはもとより、みずから学ぶ、みずから考える力など、「生きる力」をはぐくむ。
      • 豊かな人間性社会性国際社会に生きる日本人としての自覚の育成
      • 多くの知識を教え込む教育を転換し、子どもたちが自ら学び、自ら考える力の育成
      • ゆとりのある教育を展開し、基礎・基本の確実な定着と個性を生かす教育の充実
      • 各学校が創意工夫を生かした特色ある教育、特色ある学校づくり
  •  2008(平成20)年告示
    • 「ゆとり教育」への批判、学力の低下などにより改訂。
    • 生きる力の育成
    • 言語力の育成
    • 体力低下防止により、体育・保健体育の時間数の増加。

「特別活動(小学校)」
  • 特別活動の目標
    • 望ましい集団活動を通して、心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り、集団の一員としてよりよい生活や人間関係を築こうとする自主性、実践的な態度を育てるとともに、自己の生き方についての考えを深め、自己を活かす能力を養う。
  • 特別活動の内容
    • 学級活動
    • 児童会活動
    • クラブ活動
    • 学校行事
    • 学校行事
      • 儀式的行事
      • 文化的行事
      • 健康安全・体育的行事
      • 遠足(旅行)・集団宿泊的行事
      • 勤労生産・奉仕的行事

    「特別活動(中学校)」
    • 特別活動の目標
      • 望ましい集団活動を通して、心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り、集団や社会の一員としてよりよい生活や人間関係を築こうとする自主性、実践的な態度を育てるとともに、人間としての生き方についての自覚を深め、自己を活かす能力を養う。
    • 特別活動の内容
      • 学級活動
      • 生徒会活動
        • 生徒会活動については、教師の適切な指導の下に、生徒の自発的、自治的な活動が展開されるようにすること。
      • 学校行事
    • 生徒指導の機能を十分に生かすとともに、教育相談(進路相談を含む)についても、生徒の家庭との連絡に密にし、適切に実施できるようにすること。
    • 入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するように指導するものとする。
    • 各教科、道徳、総合的な学習の時間及び特別活動の授業は、年間35週以上にわたって行うよう計画する。ただし、各教科等(特別活動を除く)や学習活動の特質に応じ効果的な場合には、夏季、冬季、学年末等の休業日の期間に授業日を設定する場合を含め、これらの授業を特定の期間に行うことができる。
    • 特別活動の授業のうち、生徒会活動及び学校行事については、それらの内容に応じ、年間、学期ごと、月ごとなどに適切な授業時数を当てるものとする。
    • 総合的な学習の時間における学習活動により、特別活動の学校行事に掲げる各行事の実施と同様の成果が期待できる場合においては、総合的な学習の時間における学習活動をもって相当する特別活動の学校行事に掲げる各行事の実施に替えることができる。